(株)日立製作所の旧戸塚工場の敷地に建つ日立通信史料館の現況調査を行った。現況建物の実測調査を中心に、記録写真撮影、史料の収集及び図面作成、関係者等へのヒアリング等を行い、建築年代の特定や、建物及び敷地の歴史的背景を記録・考察した。
同建物は、鉄筋コンクリート造の3階建てで、設計者は不明。伝承により昭和10年(1935)竣工。東西に細長い平面をもち、外壁には四角い窓が規則的に連続する、シンプルな外観をもつ。窓の上部にはコーニスが取り付けられ、建物の水平線を強調している。建物内部には柱梁が露出し、中央中廊下沿いに並ぶ八角形平面の柱とハンチをもつ梁が特徴的である。日立戸塚工場本館の建築は、外壁の窓上に連続するストリングコース、玄関ポーチ各所に見られるくり形、床スラブと梁の入り隅に設けられたコーニスなど、モダニズム建築ながらも各所に様式建築的な装飾を僅かに残している。