(株)男山本店の酒造工場の敷地に建つ酒造蔵及び釜場・物置の現況調査を行い、国登録有形文化財の登録申請の業務を行った。建物の実測、記録写真撮影、史料の収集及び図面作成、関係者等へのヒアリング等により建築年代の特定や建物及び敷地の歴史的背景を記録・考察した。
 酒造蔵は、木造2階建てで3棟(仕込蔵、中蔵、三号蔵)からなる蔵と蔵の南側の釜場と一体で、釜場・物置は1階の槽場(フナバ)と2階の倉庫で構成されている。三号蔵は、和小屋と洋小屋の組み合わせ、敷桁などの構造改修の痕跡から移築と想定。史料により明治期前半に建てられた蔵を大正初期の創業期に当該敷地に移築したと考えられる。仕込蔵は棟札より大正9年建築と判明。中蔵は仕込蔵と三号蔵の外壁をそのまま利用している。釜場・物置は、史料により大正3年に平屋から2階建てに増築または改築されていると想定される。酒造蔵は、屋根が3棟の蔵を全て覆う大屋根の形状となっており、気仙沼内湾地区の歴史的建造物として最も古い建物の一つである。